小机家住宅〔東京・あきる野市〕

建築年：明治初期（明治８年頃）　何度か修復あり
所在地：東京都あきる野市三内４９０　　TEL：[phone]
構　造：木造　２階建て　　
見　学：１階は喫茶室利用者に公開（金土日月祝日11:00～17:30）、２階は通常非公開
交　通：ＪＲ武蔵五日市駅～徒歩１５分

　武蔵五日市駅前のロータリーから左手の道に向かい、山道を上がっていくと、突然　重厚なる小机家の門構えが現れます。
小机家は代々 林業を営み、江戸へと木材を出荷し、富を得たと云われております。
　この建物は７代目当主・小机 三左衛門が、銀座の洋風建築を真似て建造した明治時代の住宅。　バルコニーのある外観は洋風ですが、よく見ると漆喰壁の土蔵造り、内部は土間に和室という、和洋折衷の住宅となっています。
波型トタン葺きの屋根は当初の物と云われ、全面に赤錆が発生していますが、当初はコールタールで防錆処理されていたようです。　関東大震災や老朽化により何度か補修されていますが、小机家が自費により維持管理している、貴重な建物となっております。
　今回は、木こりとして山に入り、木を伐採しているという現在の当主が建物内を解説して下さいました。

　玄関を一歩入ると、古民家の様な土間と上がり框が。　この土間にストーブと椅子を置き、玄関を兼ねた応接空間としていた。　作業の合間の休憩や、近所の人と気軽に応対ができるようになっている。

　特筆すべきは、ウサギの鏝絵が施された明り取り障子の箇所。
その下は鳥籠となっており、さらに糞受けの抽斗まで付く。　※現在の当主・小机 篤 氏

土間から見た１階の座敷。　白壁は漆喰ではなく和紙貼りで、土壁よりも格が高いとされる。

左：内開きのガラス戸と、外開き鉄扉の組み合わせは全室共通
右：この家を建てた７代目当主・小机 三左衛門

螺旋階段は芸術的。　壊さないよう、そぉーっと上がって欲しい。

２階は主寝室であった。　一見、ＲＣ造の梁に見えるが、木造に漆喰塗り。

当時の布団仕様シングルベッドが２台有り、収納もできる。

ソファもベッドに早変わり。　いつの時代の物かは不明だが、かなり古そう。

左：２階ベランダ　　　　　　　　　右：建設当初はなかった電灯
　小机家が八王子の発電所建設に力を尽くし、この地域に電気が通ったという。
ちなみに、東京湯島にある明治の岩崎久彌邸は、輸入した発電機（当時は車の大きさ位）で電力を受給していた。

　訪問時には森藤山風 氏の個展が催されていた。　若い頃、日本各地を気ままに放浪したという森藤氏。　現在は東京の奥地にある小さな寺に住み、作品を描いている。　大きな絵を描くには寺が一番良いという。

左：玄関上にある漆喰彫刻『獏（ばく）』　関東大震災で破損していたが、現在の当主により記録から復元した物。　硝子玉の目に苦心したという。
右：主屋と居間の継ぎ目に背比べの跡が。　現在の当主と兄弟の歴史が残る。

　主屋の裏手に接する平屋は家族の団欒のための空間であり、当初は囲炉裏があった。　昭和になり現代生活に馴染むように改装された居間は、現在は喫茶室として週末に営業。　コーヒーを飲みながら、添えられたクッキーを一口いただくと、何とそのクッキーは当主の手作りだそうで、ケーキも作っているとの事。　お菓子も作る木こりさんに脱帽。

隣にある小さな茶の間は、見事な造り付け収納に囲まれている。

飾り棚と思いきや、厨房とつながる引き戸があり、食器の手渡しが出来るようになっている。

　ご案内して下さった小机篤氏には、大変感謝しております。
誠にありがとうございました。

【2012年11月　訪問】